日本コミュニケーション障害学会について
● 理事長挨拶
理事長 大井 学
「再任のご挨拶:相互作用・創発、そして市民との幅広い共同」
18年度からの3年間の任期を終え、さらに21年度から向こう3ヵ年に渡り本学会の理事長職を務めることになりました。心新たに本学会がコミュニケーション障害にかかわる学術ならびに臨床の両分野で果たすべき役割を見つめなおし、学会運営に微力を尽くす所存です。会員各位の忌憚のないご批判とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
さて多数の会員各位には、あまり身近な事柄ではないと思いますが、今期役員選出では当学会の来し方行く末を考えさせる出来事がありました。長きに渡り理事、常任理事をお務めくださった4名の諸先輩が一斉に退任され、常任理事が大幅に入れ替わったことです。いまは解散した旧聴能言語士協会から本学会が独立した当時の常任理事(旧理事)は最早どなたもおいでにならなくなりました。これは、団塊世代が現役をおりていかれる所謂2007年問題を象徴すると同時に、次世代さらには次々世代が学会の中核を担い、若い人々を育て、学会活動の新たな道筋を自ら切り開いていく責任を全面的に負わなければならなくなったことを意味しています。ポスト団塊世代を自認する私としては、これまでの本学会の素晴らしい活力を20代の若手から40代の中堅の会員の皆さんに、いかに賢明な形で引き継いでいけるか、それが問われているとひしひしと感じています。
しかし、すでに本学会には新たな力強い兆しが生まれつつあります。ここ数年いくつかの分科会が次々と誕生し、今も新たな分科会が産声を上げようとしています。会員内外の相互交流の場がますます広がることが期待されます。理事長としての役目は、こうした新たな観点からの学術と臨床の創造への個別的な挑戦が、大きく学会活動全体との間でよき相互作用を生み出すよう確かな水路付けを行うことだと理解しています。あわせて学術講演会のあり方を見直す機運も確実に高まってきており、この間に行われた学術講演会は、次々と新たなテーマや開催方法の試みに既に着手してきています。学問分野を超えた議論と、会員同士の局所相互作用の促進は、本学会が文字通りコミュニケーション障害の新たな知見と支援の技法の創発の場として機能していく上でその重要性をますます高めています。この動向は、学術全体が伝統的な垣根を越えた再編過程に入りつつあることと切り離せないものと思います。それは、科学技術が社会のあり方に根底的な変化をもたらし始めているという変革の時代の大きな流れの一部でもあるでしょう。ネット上での活発な議論に現れているように、科学技術の成果の受動的享受者としてだけでなく、科学技術のありかた自体に主体的に関与しようとする市民の登場を、本学会が今後しっかりと受け止め、市民との幅広い共同のもとで学術の創成に取り組むための、いっそう幅広い視野からの学会活動の展開を模索していくことで、私たちの世代に与えられた使命を果たすことができるものと考えています。
(2009年7月)